マチと人の息づかい伝える/記者の顔が見える署名記事
地域に根ざした身近なニュースを届けるのも、新聞の大切な役割です。スポーツ少年団の活躍、ボランティア活動に打ち込むお年寄り、医療や福祉の話題…。住民の息づかいが感じられる充実した地方版は、北海道新聞が読者とともに育ててきた、大きな財産のひとつといっていいでしょう。
地方版は通常、地域ごとに毎日、複数のページが設定されています。朝刊は札幌市内版や「名寄 士別」「中・北空知」「渡島 檜山」など札幌を含めて計51種類、夕刊は「後志・小樽」「ねむろ」など22種類。旅行や出張先で見る紙面が、見慣れた地元の地方版と違っていて驚いた経験のある読者も多いことでしょう。多くの記事に記者の署名が入っているのも、地方版の大きな特色になっています。地域と道新をつなぐ「顔の見える紙面」づくりの一環です。
それでは、ある日の朝刊旭川版を広げてみましょう。通常は中ほどに見開きで2ページあります。まず目に飛び込んでくるのは、「舞台万全 熱戦待つ」と障害者スキーW杯の地元準備態勢を伝える左面のトップ記事でしょうか。左肩には公立高入試の出願変更状況も一覧表つきで掲載されています。このように、左面は上川管内全域に関わる記事が中心です。
右面では、旭川市の介護保険料引き上げ案の記事を軸に、「美瑛高生がパン開発」など、マチの話題が展開されています。地域活性化に頑張る住民たちを紹介する「人」コーナーや、短いながら重要なお知らせ情報も盛られています。
このほか金、土曜には道北面1ページが加わり、問題点を掘り下げた「探る見る」コーナーなどが設けられています。旭川版に限らず、硬軟取り混ぜ多彩な記事を展開しているのが地方版―といえるでしょう。
各地域の地方版には、記者コラムのコーナーがあります。札幌の「記者日記」、北見・オホーツクの「みずなら」、帯広・十勝の「ひとつ鍋」…。これまでの出会いを振り返りつつ、取材を通じて感じたことや地域への思いを、記者が交代でつづっています。コラムをきっかけに「いつも読んでるよ」など取材先で励まされることも多く、記者はどんな情報が地域の読者に必要とされているか考えながら、毎日の地方版を作っています。
『道新読み方ガイド』(2015年3月9日 北海道新聞朝刊「道新ぷらす」コーナーより転載)