*問題点を指摘し警鐘鳴らす/「道民の視点」で議論重ねる
朝刊3面にある社説はニュースに対する解説や論評にとどまりません。問題点を指摘し、警鐘を鳴らす。北海道新聞社としての主張です。経済のグローバル化が進む一方で世界各地では紛争が絶えません。国内に目を転じれば少子高齢化時代に入り、将来展望がなかなか描き出せません。そんな時代だからこそ、複雑に絡み合う事柄を解きほぐし、分かりやすく「明日への指針」を提示する。社説の目指すのはそこです。
北海道新聞の場合、通常は2本、特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認など国のあり方や国民生活に大きく影響を与えるニュースの時は1本の大きな社説を掲げます。担当しているのは論説委員で、札幌本社に9人、東京支社に6人います。政治、経済、社会、国際などの分野を長く取材してきた記者です。
取り上げるテーマは毎日開かれる会議で決まります。札幌と東京をマイクでつなぎ、自由な意見交換の中からテーマを絞り込み、何をどう訴えていくかを話し合います。それを踏まえ、担当者がまとめていくのが基本スタイルです。だから大きなテーマでは活発な議論が交わされます。
たとえば安倍晋三首相が衆院の解散を表明した先月18日の会議では、意見が交錯しました。
「首相は解散の理由に来秋に予定されている消費増税の先送りを挙げたが、野党も増税には否定的だ。解散に大義はない」とする指摘がありました。
その一方で「安倍政権はこの2年間、特定秘密保護法の制定や集団的自衛権の行使容認を閣議決定するなど、国論が割れるテーマで信を問うてこなかった。国民が審判を下す好機だ」とする意見も出ました。
その結果、翌日の社説は「衆院解散へ 問われる安倍政治の2年」との見出しを掲げ、総選挙の意義を提示しました。
そして自民、公明両党の圧勝に終わった投開票日の社説は安倍政権が国民の意向を無視して独走しないように「異論も聞き入れる政治を」との見出しで一本社説を掲げました。
テーマによっては、簡単に「解答」が見いだせないものもあります。その時、立ち返るのは道民視点です。良識ある道民ならどう考え、どんな結論を導き出すか。その視点こそ、社説を貫く背骨です。
『道新読み方ガイド』(2014年12月22日 北海道新聞朝刊「道新ぷらす」コーナーより転載)